NO,133    同じ命ある存在として ~共に感じ、通じ合う関係~

知人が保護ネコの里親になったそうです。自宅の飼育環境や留守の状況など様々な事前審査を経て、新しい家族として迎え入れたとのこと。賑やかになったと喜んでいました。
ペットの里親制度は何らかの事情で飼い主を失ったペットを保護する制度ですが、同じような動きが“緑”にもあるようです。

〇「植木の里親」という新しい取り組み

東京都下にある造園屋さんが、「植木の里親」という取組をしています。先ずは、家の引越しや建て替えなどの事情で庭の木や鉢物を処分したい人から引き取ります。庭木は根ごと掘り出して同社の敷地内にいったん植栽するそうです。それらを自店やSNS、地元のタウン誌などで公開して、里親を募集します。応募してきた人が里親として育てられるかどうかを確認してから引き渡す仕組みです。
里親になる人から植木代金はとりませんが、植栽費用や運搬費は有料だそうです。これまで累計で3,000本以上の実績があるそうで、良い取組だと思います。

グリーン・ポケットは法人のお客様が中心ですが、似たようなケースとしてお客様のお手持ちの植物のメンテナンスや廃棄の相談を受けることがあります。引越し祝いなどで貰った鉢物の植物が「葉が伸びすぎて困っている」「水やりができてない」「枯れてしまって処分したい」というものです。中でも処分は問題となっています。
こうした声に応えるべく、グリーン・ポケットはメンテナンス代などメニュー化されており、状況に合わせて最適のプランを提案しています。

行政にも「緑の里親制度」がありますが、これは同じような名前でもあくまでボランティア活動です。日本各地で行われていて、神奈川県茅ヶ崎市の「緑の里親制度」を例にすると、運営者は茅ヶ崎市公園緑地課、目的は公共空間に草花などを植えて街並をきれいにするものです。登録された市民やグループが自主的に行っています。

〇同じ生命体として、共に暮らし通じ合う存在
   
上記のような植木の里親制度をしている花屋や造園屋はあまりみかけません。保護ネコの里親になった知人も知らなく、自分と照らし合わせたのかこんな感想を伝えてくれました。

「植物も同じ命だものね」

この一言に、人間と植物の関係をみるような気がします。植物は犬やネコのように言葉を発せず、懐いたり駆け寄ったりもしないけれど、同じ生命体として共に暮らし通じ合う存在であることはペットと変わらないかもしれません。

植物は自分では動きません。人間が心を寄せ、世話をやき、気づき、支えることで関係が深まります。水をあげる、光を当てる、ほこりがつかないように葉を拭いてあげる。犬ならばすぐに尻尾を振るだろうしい、ネコならば目を細めたりするでしょう。植物はその時は何も答えません。でも、ある日「新芽が出た」「花が咲いた」「葉が元気になった」――そんなサインを返してくれるのです。植物は「最も無口なペット」なのです。

また、グリーン・ポケットに会社の植木鉢の廃棄を依頼された総務部長の話です。大切な取引先から引越し祝いに貰い、担当者の顔が浮かんで捨てられなかったそうですが、「植物の会社に引き取って貰ったといえば少しは義理が立つ」と言われました。総務部長にとっては、単なる鉢物ではなく、人と人、会社と会社の信頼関係の象徴でもある深い存在だったのでしょう。

植物は何も語らないけれど、「命ある存在」として、共に感じ、通じ合う存在です。人間を豊かにしてくれるものだと改めて感じます。